存在しない都市についての本を何冊か読んだ

people walking on the streets surrounded by buildings 読書
Photo by Aleksandar Pasaric on Pexels.com

歎異抄について何冊か本を読んでからの約三週間の間、存在しない都市について書かれた本を三冊ほど読んでいた。そのキッカケは、積んでいた本の中に『方形の円 偽説・都市生成論』があったからだ。作者はギョルゲ・ササルマン。どこの国の作家なのか見当もつかない。

そして『方形の円』、つまり四角の丸という不思議なタイトル。さらにサブタイトルの「偽説・都市生成論」。この文字列にワクワクするのは僕だけではないだろう。創元SF文庫の表紙も素敵だ。

『方形の円』は建築学校出の作者が考えた36個の架空の都市について書かれた短編集だ。中には2ページほどのショートショートのような作品もある。分かりやすいストーリーになっているものもあれば、抽象的な内容のものもあり、それぞれ味わい深い。

ちなみに、作者のギョルゲ・ササルマン氏はルーマニアの作家とのこと。本の内容はとても面白かった。解説は酉島伝法が書いていた。『皆勤の徒』は好きな作品なのでこの解説も嬉しい。

解説でも触れられているが、『方形の円』と同時期に似たコンセプトの作品がイタリアで出ているという。というより、そちらの方が有名な作品のようだ(恥ずかしながら僕は知らなかったが)。

それはイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』という作品である。こちらも存在しない都市についての短編が多数書かれたものである。ただし、『方形の円』が架空の都市の崩壊を描くのに対し、『見えない都市』はマルコ・ポーロがフビライ・ハンに対して見てきた都市の様子を語るという体で進んでいく。

せっかくなので、これも購入して読んでみた。僕は文学の素養が無いので解説を読むまでまったく分からなかったが、『見えない都市』は実験的小説の側面が強いらしい。各章のタイトルが意図的に配置されており、そこに書かれている内容に意味があるようなないような。パズルのようになっているとのこと。

文学理論や実験小説のようなものについては疎く、もうちょっと勉強した方がよいかもと思った。かもと思っただけなので、実際に勉強するかは不明。

最後にこれまた積んでいた(というよりパラパラと読んだが、ちゃんと通して読んでいなかった)『世界をまどわせた地図』という本をついでに読んだ。

これは小説ではなく、実際の地図に描かれた存在しない都市や国、大陸について集めた本である。アトランティス、ムー大陸、エルドラドなど有名どころから、蜃気楼を見間違えたらしい架空の島、詐欺師が意図的についた嘘のせいで地図に描かれた島などが紹介されている。

中でも台湾について大嘘を綴ったジョルジュ・サルマナザールという人物についての話が面白かった。彼の書いた『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史: 台湾と日本の地理歴史』が平凡社ライブラリーから出ているので、これは買って読む予定。

それにしても架空の都市や国というのは、なぜこうもワクワクするのだろうか。いや、実際に存在する都市の話でも、行ったことがない/見たことがない場所の話はとてもワクワクする。人間に備わった探究心、自分の知らないものを見たい、知りたいという心の働きのせいなのだろうか。

毎日通っている場所でも、ふとしたときに全然知らない場所に見えることだってある。もしかすると、僕たち一人一人にとって、同じ場所でもまったく違う場所に見えていることもあるのかもしれない。

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