最後の親知らずを抜いた

 先日、行きつけの歯医者で最後の親知らずを抜いた。

 「最後の」とは言っても、僕の記憶ではこれまでに抜いた親知らずは二本しかなく、今回抜いたものが三本目のはずだった。しかし、歯医者で見せられたレントゲン写真を見ても残っているはずの一本の親知らずは見当たらない。最初から三本しか無いのか、それとも忘れているだけで人生のどこかで抜いたのかは分からない。

 そういうわけで、これが最後の親知らずの抜歯になった。

 三本目の抜歯ということで、僕としても慣れたものだった。右側の親知らずは上下ともに既に無く、上の抜歯と下の抜歯のどちらについても経験があったからだ。つまり、上は比較的楽だが鼻腔に貫通するリスクがあって怖く、下は比較的難作業かつ顎の神経が近いので顔面麻痺などのリスクがあってとても怖いということだ。

 今回抜歯したのは左下の親知らずだったので、難作業かつ顎の神経が近いので顔面麻痺などのリスクがあってとても怖かった。しかも、治療前に歯科医から「抜いたあと、とても痛むと思います~」と言われ、恐怖に拍車がかかる。これまでの抜歯ではこんな告知は無かった。これは本当に痛むやつだ……。

 歯科医が痛みを告知してきたのは、この親知らずを抜くことになった経緯に関係がある。親知らずの前の奥歯(7番と呼ばれているものだ)の神経が数年前に他界し、冠を被せて何とかごまかしてきた。しかし、冠は度々外れ、土台も歯肉の下に潜り込む奥ゆかしさを見せ始めた。そのため、その横にいる親知らずを抜歯した上で、骨を少し削り歯肉の高さを下げて土台を露出させようというのだ。親知らずの抜歯と土台の確保。一石二鳥。一挙両得。二兎を追うものは一兎をも得ず。

 そのため、まだコンニチワしていない骨に若干埋まっている親知らずを無理やり取り出すことになったのだ。恐らく、こうした経緯こそが歯科医をして「痛みを覚悟せよ」と言わしめた原因であろう。患者たる僕は診察台で震えることしかできない。

 しかも、歯と神経が結構近いらしく麻痺のリスクもゼロではないと言われた。CTを撮って確認したところ、若干距離があるので大丈夫だろうということだったがリスクはあるということらしい。

 さて、抜歯は無事に終わった。40分くらいかかっただろうか。これまでの親知らずの抜歯よりも時間、労力ともにかかった印象である。特に歯を抜くときは神経が近いためか痛みを感じた。

 抜歯中、脳裏に「ヌキありの歯医者」という言葉が浮かんでは消えた。昔、歯科医もののアダルトビデオを見たことがある。それは治療台に寝かせられた男性患者が、女性歯科医(助手の場合もある)からわいせつな行為をされる受け身な内容だったが、実際に診察台に寝かせられて何かされても恐怖でしかないよな~と考えたりした。診察台に寝かせられている状態は無防備の極みであり、拷問とかされても逃れようがないからだ。

 また、痛みと恐怖から意識を逸らすために脳内でポメラニアンを数えたりした。眠れないときにやる「羊が一匹…」のポメラニアン版である。なぜ数ある動物の中から犬、そして数多の犬種の中からポメラニアンが選ばれたのかは皆目検討もつかない。しかし、僕の脳は安心の象徴としてポメラニアンを選択したのであり、これは今後の人生でも一つの有用な知見になりそうだ。

 そして、数日が経った。

 歯科医の予告通り痛みはそれなりにある。決して激しい痛みではないが、じんわりとした痛みがある。特に夜は副交感神経かなにかが活発になるせいか痛みが酷い。痛み止めも処方されたが、それももう飲み干してしまったため、手持ちのロキソニンで何とかするしかない。幸い、顔面に痺れはない。

 親知らず抜歯後は、血餅(かさぶたのようなもの)が取れないように細心の注意を払って生活をすることになるのは、これまでの経験から知っていた。激しいうがいをしないように言われるのはそのためだ。それ以外にもストローを使ってものを飲む、くしゃみなども敵である。しかし、いまは花粉症真っ只中。くしゃみが出そうになるし、何回かくしゃみをしてしまった。

 次の歯医者まで数日ある。何とか乗り切りたい。

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