S・ハンター『極大射程』上下巻を読んだ

2024年一発目の読書はスティーブン・ハンターの『極大射程』上下巻だった。一発目と言いつつ、上下巻合わせて2冊読んでいるのは御愛嬌。せっかく読んだので感想というか、メモというかを残しておく。

年末年始のkindleセールで安くなっていたので、シリーズを一気に購入した。映画の方は昔見たことがあったが、原作小説を読むのは初だ。

あらすじは以下の通り。

隠遁生活を送るヴェトナム戦争の英雄、伝説的スナイパーのボブ・リー・スワガーのもとにある依頼が舞い込む。新たに開発された銃弾の性能をテストしてほしいというのだ。だが、それはボブを嵌める罠だった。恐るべき陰謀に巻き込まれ、無実の罪を着せられたボブは、FBI捜査官のニックとともに、事件の真相を暴き、陰謀の黒幕に迫る。愛と名誉を守るための闘いが始まる!

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言ってしまえば、罠にハメられて逃亡者となった凄腕スナイパーによる復讐劇だ。スナイパーが主人公なので、ライフルについての描写が多分にある。僕は銃社会ではない日本生まれ日本育ちだし、ミリオタでもないので銃のことはサッパリ分からないが、それでも楽しく読むことができた。

楽しく読めたのは、やはりストーリーに起伏があって、これからどうなるんだろうと思わせるポイントが随所にあるからだと思う。主人公のボブの視点だけでなく、敵側の視点やFBI捜査官ニックの視点など複数の視点に切り替わりながらストーリーが展開していく。後半にいくにつれて、ボブの視点で描写されることは減っていくため、彼が何を考えているのか、どうするつもりなのかが読めない。そのため、読者はむしろ敵側の視点からボブの行動を見守ることになる。

スナイパーの話なのだから、銃を撃ちまくるだけなんでしょう?と思いがちだが、むしろ銃を撃つ描写より、そこに至るまでの過程が丁寧に描かれている。そのため、前述のように読者はボブの行動(射撃を含め)を待つような状態になり、少しずつ焦らされていくのが上手いところだと思った。実際、下巻にはボブが銃を撃つ描写がたくさん出てくる場面があるのだが、そこに至るまでに散々焦らされていたので、ようやく撃ち始めたときにカタルシスを感じられた。

伏線もいくつか仕掛けられており、それらが回収されていくのも楽しい。スナイパーは実際の射撃の前に入念な準備をするものらしいが、本書のストーリーもそのようだった。繰り返しなるが、劇的な展開に至るまでに丹念に準備されている。

さて、主人公のボブ・リー・スワガーがヴェトナム戦争に従軍したということで、やや隔世の感がある。ベトナム戦争は1975年までなので、僕が生まれるはるか昔である。なぜベトナム戦争なのかというと、本書がアメリカで出版されたのが1993年だからだ。

30年以上前に刊行された小説なので、当然いまほど監視カメラもないし、携帯電話もインターネットもほとんど出てこない。そうした背景で成り立っているストーリーではある。

それを引いても、読んでいて面白い。シリーズが10巻以上あるのも納得である。現在、シリーズの外伝的作品である『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』を読んでいる。こちらも読み応えバッチリで、ついつい読み進めてしまう面白さだ。

最後に、映画の方の『ザ・スナイパー 極大射程』を見たことを書いておく。小説で上巻の半分を費やして描写された展開がものの15分くらいで終わって驚いた。尺の都合上、キャラの設定が大きく異なる部分があった。どちらも目を通した上で、小説版の方が面白いし好きだなと思った。

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