読書

  • 2026年1月に読んだ本

     1月に読んだ本を振り返ります。僕はbooklyというアプリで読書管理をしている(このアプリについてもいずれ記事を書きたい)のですが、そのアプリは1ヶ月のサマリーを画像でくれます。その画像を貼ります。

     読書時間は8時間39分。年間100時間の読書が今年の目標なので、なかなかいい感じのペースです。31日間のうち、26日は読書をしたようです。5日間は忙しくて本を読めませんでした。

    1月に読んだ本

    奥田 弘美 (著)『それ、すべて過緊張です。』

     Kindle版を読みました。少し話題になっていたのと、Amazonポイントが余っていたので購入。

     タイトルになっている「過緊張」というのは医学用語ではないのですが、仕事以外の時間にも仕事のことをずっと考えたり、あった嫌な出来事のことばかり考えて緊張状態になってしまっていることを言うらしいです。

     結論としてはしっかり寝て、栄養のあるものを食べて、適度な運動をすることが一番という当たり前なことが書いてありました。ただ、休息にも段階があるというのは目から鱗でした。

    倪 雪婷 (編)『宇宙墓碑 現代中国SFアンソロジー』

     ハヤカワから発売された中国のSF作品のアンソロジーです。『三体』の大ヒットを皮切りに最近は現代中国の小説群の翻訳が増えてきたような印象です。出版社も売れるという手応えがあり、どんどん翻訳を出しているのでしょう。

     収録されている作品だと阿缺(アーチュエ)という方が書いた「彼岸花」が面白かったです。ゾンビになった男が主人公なので、ゾンビ視点で物語が進んでいきます。面白いのは、ゾンビたちにも実は意識があって、互いにコミュニケーションを取ったりしているところ。ゾンビたちの会話がコミカルで良かったです。

    カミール・グーリーイェヴ、デニス・ブーキン (著)『KGBスパイ式記憶術』

     ソ連の秘密警察であるKGBをテーマに記憶術を扱った本です。KGBと書いてありますが、内容は普通の記憶術に関するビジネス本だと思います。そのため、僕も知っている記憶術がよく出てきます。

     この本の面白いところは、色んな記憶力を鍛えるための演習がついている点です。実際に試していけば、確かに記憶力が鍛えられるかもと思いました。ちなみに僕は演習をやっていません。

    シーラン ジェイ ジャオ (著)『鋼鉄紅女』

     これも中国SFか?と思いきや、著者は生まれは中国ですが、10代でカナダに渡ったということで英語で書かれた作品のようです。ただ、題材は中国の神話や歴史上の人物から着想を得ているので、中華SFといってよいでしょう。

     変形ロボットもので、日本のアニメ「ダーリン・イン・ザ・フランキス」を見て物語のイメージが湧いたらしいです。内容も実にアニメ的な印象を受けました。読みやすくてすいすい読めましたが、自分はそこまでハマれませんでした。


  • 新年恒例のブックオフ巡りの戦果

     僕は毎年1月2日もしくは3日はブックオフに行きます。それはブックオフが毎年正月にセールをやるからで、今年も例に漏れず本全品20%オフセールを実施していました。そして僕もやはり例に漏れず今年もブックオフに行ったのでした。

     僕がアクセスできる(またはしやすい)ブックオフの店舗は4店舗あります。2023年はかなり足を伸ばして6店舗ほど周ったのですが、今年はちょっと忙しかったのもあって、3店舗を巡りました。

     アホなので後先を考えずにたくさん買ってしまいました。それに心のどこかで本はたくさん買っても良いと思っているのですよね。買った本は以下です。(順番は適当)

    本山賢司『[図解]さかな料理指南』

     最近料理に興味が出てきて、たまにレシピ本や料理本を買っています。これは魚に特化した内容でパラパラと読んで面白そうだったので購入。

    ホメロス『オデュッセイア(上)』

    ホメロス『オデュッセイア(下)』

     クリストファー・ノーラン監督が映画化するらしいですね。友人から「読んでる?」と聞かれて、そういえば読んでないなと思ったことがあり、この度購入しました。読むぞ。

    E・H・ゴンブリッチ『若い読者のための世界史 改訂版』

     同じ著者が書いた『美術の物語』のポケット版を購入して途中まで読んでいるので、著者買いしました。

    原田敏明・高橋貢訳『日本霊異記』

     読んだことがあるし、確か講談社文庫版か何かを持っているのですが、手元にあるか不明なので念のため購入。たまに日本霊異記を読みたくなることがありますね。

    ゲイル・キャリガー『ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する』

     シリーズを未読なのですが、見つけるたびにちょっとずつ買い集めています。すべて集めたら読み始める予定です。

    上橋奈穂子『鹿の王 1』

    上橋奈穂子『鹿の王 2』

     前々から読みたいなと思っていた作品でした。

    城田俊『現代ロシア語文法 中・上級編』

     はるか昔にロシア語をやっていまして、城田先生の『現代ロシア語文法』は持っているのですが、中・上級編は持っていなかったので購入しました。ちなみに直近でロシア語を勉強する予定はありません。

    BREaTH特別号『COMPLETE MASAYOSHI YAMAZAKI 1995-2000』

     僕は山崎まさよしファンで、読んだことがないものだったので購入しました。山崎まさよしが若すぎる。

    中井精也『世界一わかりやすい デジタル一眼レフカメラと写真の教科書』

    中井精也『世界一わかりやすい デジタル一眼レフカメラと写真の教科書 何をどう撮る?活用編』

     今年は写真を撮ってみたいなと思っていたので購入。著者が出ているNHK BSの番組「中井精也の絶景!てつたび」を度々みているので、それも購入した理由です。

    吉野信『ネイチャーフォト入門』

     これも写真関連。古い本ですが安かったのと、自然の写真ってうまく撮れたら格好良さそうなので購入しました。

     これまで読書といえば小説が多かったのですが、今年は小説よりも実用書の方に興味が向いているようです。目ぼしい本を探して棚をうろうろしているときにそう気がつきました。歳を取れば嗜好も変わるものですね。年一回のブックオフ巡りは、自分の趣味嗜好の変化を気づかせてくれる良い機会になっているようです。来年も行けたら行きたいと思います。


  • 今さら『半沢直樹』を追っています

    2013年に一世を風靡したドラマ『半沢直樹』。堺雅人演じる銀行員の半沢直樹が、行内の不正や陰謀に立ち向かっていくお仕事ドラマです。10年以上も前のドラマですが、なぜか今さらこの作品を見返しています。

    放送当時、大学生だった僕は日曜の夜はバイトか、もしくは飲み会に呼ばれてフラフラしていることが多く、始めから終わりまで丸っと観ていませんでした。ドラマを観た回数より、友人たちがやっていた「土下座しろー!やれー!」という最終話の物真似を見た回数の方が多いくらいです。

    ドラマを見た後、池井戸潤による原作小説『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』の二冊を読みました。前者は2004年、後者は2007年刊行です。バブル世代が90年前後に大卒で就職をしていることを考えると、彼らが30代後半から40代前半のときに『オレたちバブル入行組』が出たことになります。

    当時、働き盛りであり、仕事の家庭の両方で悲喜交々な世代だったであろうバブル世代にドストライクな内容だったことでしょう。ドラマのタイトルが「半沢直樹」になったのは、バブル世代だけでなく幅広い層をターゲットにしているからでしょう。ドラマ名で「オレたち花のバブル組」と言われても、当時三十代の氷河期世代の怒りを買うだけですよね。

    ドラマと原作小説の両方に触れたことで、ドラマの方で感じた違和感が解消されました。ドラマは見たことがあるという人でも、原作本を読むのもオススメです。

    例えば、ドラマでは金沢でネジ工場を経営している父が、銀行から融資を断られてしまいます。その後、ちょうど融資を断った銀行とは別の銀行の融資課の担当者が来て、直樹少年が工場にいる父のところへ案内すると、そこには自ら命を絶った父の姿が……というエピソードが展開されました。

    一見悲劇的なのですが、どうも劇中で描写される父の像(責任感があり、社員や家族のことを第一に考えている)からすると、絶望して全てを放り出して死ぬというのは違和感のある描写でした。それに銀行員が来る直前に死んでいるというのも何だか間が悪いというか、ちょっと間抜けな感じもあります。

    原作を読むと、なんと半沢直樹の父は普通に生きているんですね。銀行から融資を断られたのは一緒なのですが、別の融資してくれる銀行を見つけ、普通にネジ工場を営んでいるのです。これを読んで違和感は氷解しました。

    このようにドラマはドラマとして盛り上がるため、また1シーズンに納めるため色々と工夫をしています。大筋は一緒なのですが、複数の登場人物を一人にまとめたり、原作では後半に出てくる有名なセリフ「やられたら、やりかえす。倍返しだ」を一話から使ってみたり、非常にドラマティックになるよう再構成されています。

    ドラマは1時間かつ全10話という構成なので、毎週盛り上がりを作る必要があります。原作小説も次から次へと嫌な奴や陰謀が出てくるので盛り上がるのですが、ドラマはそれを極端にして毎回飽きさせないようにしています。「倍返し」というパワーワードをぶち込み、出演者たちの顔芸(良い意味です)も随所に入れる。インパクトと分かりやすさ、カタルシスはエンタメに欠かせないものだと改めて思わされました。

    まだ2020年のシーズン2は観ていません。これも原作小説と合わせて観たいと思います。


  • 2025年一冊目の読書は『星を継ぐもの』

     毎年、読書初めや映画初めは何にしようと悩む。年初めに妙な作品に触れると、その年全体が微妙な感じになるのではないかと思ってしまうからだ。いわば願掛けのようなものだ。そのため、どうしても毎年名作と呼ばれるような作品に落ち着いてしまう。そのようなわけで今年も例に漏れず、名作から読書初めをすることにした。

     今年の一冊目はジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』だ。読むのは7年ぶり2回目である。

     『星を継ぐもの』はあまりに名作かつ有名な作品なので、今さら僕が感想を書く必要はなかろう。久しぶりに読んでみると、大筋は覚えているものの枝葉は忘れていて、こんな話だったっけと思うことしきりだった。

     とにかくこれでもかとSF的なギミックや発想を詰め込んだ作品で約半世紀前に出た作品にも関わらず、未だに新しさすら感じる。2回目の読書なので、さすがにご都合主義的なところやギミックが先行している点が目に付いたが、それにしてもスケール感の大きさが凄く、これぞSFといったところだ。個人的には近年の『三体』シリーズ、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』、古いが『ファウンデーション』シリーズと並んでオールタイムベストの上位に入る。

     久々に本書を読んだのは、先月シリーズ最新作『ミネルヴァ計画』の邦訳がついに出て購入したからである。シリーズの内容をかなり忘れているので読み直したのだ。今年の初めはこのシリーズを楽しんでいきたい。


  • 存在しない都市についての本を何冊か読んだ

    歎異抄について何冊か本を読んでからの約三週間の間、存在しない都市について書かれた本を三冊ほど読んでいた。そのキッカケは、積んでいた本の中に『方形の円 偽説・都市生成論』があったからだ。作者はギョルゲ・ササルマン。どこの国の作家なのか見当もつかない。

    そして『方形の円』、つまり四角の丸という不思議なタイトル。さらにサブタイトルの「偽説・都市生成論」。この文字列にワクワクするのは僕だけではないだろう。創元SF文庫の表紙も素敵だ。

    『方形の円』は建築学校出の作者が考えた36個の架空の都市について書かれた短編集だ。中には2ページほどのショートショートのような作品もある。分かりやすいストーリーになっているものもあれば、抽象的な内容のものもあり、それぞれ味わい深い。

    ちなみに、作者のギョルゲ・ササルマン氏はルーマニアの作家とのこと。本の内容はとても面白かった。解説は酉島伝法が書いていた。『皆勤の徒』は好きな作品なのでこの解説も嬉しい。

    解説でも触れられているが、『方形の円』と同時期に似たコンセプトの作品がイタリアで出ているという。というより、そちらの方が有名な作品のようだ(恥ずかしながら僕は知らなかったが)。

    それはイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』という作品である。こちらも存在しない都市についての短編が多数書かれたものである。ただし、『方形の円』が架空の都市の崩壊を描くのに対し、『見えない都市』はマルコ・ポーロがフビライ・ハンに対して見てきた都市の様子を語るという体で進んでいく。

    せっかくなので、これも購入して読んでみた。僕は文学の素養が無いので解説を読むまでまったく分からなかったが、『見えない都市』は実験的小説の側面が強いらしい。各章のタイトルが意図的に配置されており、そこに書かれている内容に意味があるようなないような。パズルのようになっているとのこと。

    文学理論や実験小説のようなものについては疎く、もうちょっと勉強した方がよいかもと思った。かもと思っただけなので、実際に勉強するかは不明。

    最後にこれまた積んでいた(というよりパラパラと読んだが、ちゃんと通して読んでいなかった)『世界をまどわせた地図』という本をついでに読んだ。

    これは小説ではなく、実際の地図に描かれた存在しない都市や国、大陸について集めた本である。アトランティス、ムー大陸、エルドラドなど有名どころから、蜃気楼を見間違えたらしい架空の島、詐欺師が意図的についた嘘のせいで地図に描かれた島などが紹介されている。

    中でも台湾について大嘘を綴ったジョルジュ・サルマナザールという人物についての話が面白かった。彼の書いた『フォルモサ 台湾と日本の地理歴史: 台湾と日本の地理歴史』が平凡社ライブラリーから出ているので、これは買って読む予定。

    それにしても架空の都市や国というのは、なぜこうもワクワクするのだろうか。いや、実際に存在する都市の話でも、行ったことがない/見たことがない場所の話はとてもワクワクする。人間に備わった探究心、自分の知らないものを見たい、知りたいという心の働きのせいなのだろうか。

    毎日通っている場所でも、ふとしたときに全然知らない場所に見えることだってある。もしかすると、僕たち一人一人にとって、同じ場所でもまったく違う場所に見えていることもあるのかもしれない。


  • 2024年2月の読書まとめ

    2月は4冊の本を読んだ。いずれも1月からずっと読んでいたスワガーサーガだ。

    S・ハンター『極大射程』上下巻を読んだ – 滑稽ウツボによる生存報告 (funny-moray.com)

    2月の読書メーター
    読んだ本の数:4
    読んだページ数:1794
    ナイス数:14

    ブラックライト 上 (扶桑社ミステリー ハ 19-2)ブラックライト 上 (扶桑社ミステリー ハ 19-2)感想
    前作とは趣が変わり、なんだか探偵小説のようなテイスト。バドのその後にはショックだったし、サムも老いてしまっているのはショックだったけど、少しずつ真実が見え始めていくのは面白い。
    読了日:02月09日 著者:スティーヴン ハンター
    ブラックライト 下 (扶桑社ミステリー ハ 19-3)ブラックライト 下 (扶桑社ミステリー ハ 19-3)感想
    上巻には無かったスナイパー同士の銃撃戦があって良かった。バドも元気に出てきて良かった。ただ、サムが死んでしまったのは悲しい。 サスペンス色の強かった前作から一転、ミステリ物のような雰囲気で進み、エンタメ小説として一貫しながらも色んなテイストで物語を書くことができる作者の力量に敬服。
    読了日:02月13日 著者:スティーヴン ハンター
    狩りのとき 上 (扶桑社ミステリー ハ 19-4)狩りのとき 上 (扶桑社ミステリー ハ 19-4)感想
    過去編が始まった。名前だけ出ていたダニーの人となりが描かれるのが良い。極大射程で名前だけ出てきたソララトフが出てくるが、極大射程とちょっと設定に食い違いがある気がする。この違和感は著者の間違いなのか、それとも下巻で何かタネ明かしがあるのか。
    読了日:02月22日 著者:スティーヴン ハンター,Stephen Hunter,公手 成幸
    狩りのとき 下 (扶桑社ミステリー ハ 19-5)狩りのとき 下 (扶桑社ミステリー ハ 19-5)感想
    上巻はほとんど1971年が舞台だったので、いつになったら現代のボブの話に戻るんだろうかと思いながら読んでいた。ダニーが死ぬことは極大射程から分かっていることなので、どういう展開になるか読めなかったからだ。しかし、この下巻ではそこに仕組まれた陰謀と真実が明るみになっていく。ミステリ要素あり銃撃戦ありで、どんどん読み進めてしまった。著者は読者を誘導するのが本当にうまい。
    読了日:02月26日 著者:スティーヴン ハンター

    読書メーター

    これでボブ・リー・スワガーを主人公とした三部作+外伝一作(計七冊)を読み終えた。大長編シリーズということもあり、さすがにエンタメ要素が高くて面白い。

    一作目の極大射程は、大統領暗殺未遂事件の犯人に仕立てられた主人公ボブ・リー・スワガーが、どのようにして難を逃れ、自分をハメた人間たちに報復していくのかという筋書きだった。続く二作目はボブの父親アール・スワガーの死の真相を追う探偵もののようなストーリー仕立てになっている。さらに三作目はボブの相棒だったダニーの話がメインで、それが現代のボブの身の回りの事件に繋がっていくというストーリーだ。それぞれ主人公は共通しているのだが、テイストが異なっており、飽きずに読むことができた。

    一旦、スワガー・サーガはここで読むのをやめて、3月は違う毛色の本を読んでいくつもり。


  • S・ハンター『極大射程』上下巻を読んだ

    2024年一発目の読書はスティーブン・ハンターの『極大射程』上下巻だった。一発目と言いつつ、上下巻合わせて2冊読んでいるのは御愛嬌。せっかく読んだので感想というか、メモというかを残しておく。

    年末年始のkindleセールで安くなっていたので、シリーズを一気に購入した。映画の方は昔見たことがあったが、原作小説を読むのは初だ。

    あらすじは以下の通り。

    隠遁生活を送るヴェトナム戦争の英雄、伝説的スナイパーのボブ・リー・スワガーのもとにある依頼が舞い込む。新たに開発された銃弾の性能をテストしてほしいというのだ。だが、それはボブを嵌める罠だった。恐るべき陰謀に巻き込まれ、無実の罪を着せられたボブは、FBI捜査官のニックとともに、事件の真相を暴き、陰謀の黒幕に迫る。愛と名誉を守るための闘いが始まる!

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    言ってしまえば、罠にハメられて逃亡者となった凄腕スナイパーによる復讐劇だ。スナイパーが主人公なので、ライフルについての描写が多分にある。僕は銃社会ではない日本生まれ日本育ちだし、ミリオタでもないので銃のことはサッパリ分からないが、それでも楽しく読むことができた。

    楽しく読めたのは、やはりストーリーに起伏があって、これからどうなるんだろうと思わせるポイントが随所にあるからだと思う。主人公のボブの視点だけでなく、敵側の視点やFBI捜査官ニックの視点など複数の視点に切り替わりながらストーリーが展開していく。後半にいくにつれて、ボブの視点で描写されることは減っていくため、彼が何を考えているのか、どうするつもりなのかが読めない。そのため、読者はむしろ敵側の視点からボブの行動を見守ることになる。

    スナイパーの話なのだから、銃を撃ちまくるだけなんでしょう?と思いがちだが、むしろ銃を撃つ描写より、そこに至るまでの過程が丁寧に描かれている。そのため、前述のように読者はボブの行動(射撃を含め)を待つような状態になり、少しずつ焦らされていくのが上手いところだと思った。実際、下巻にはボブが銃を撃つ描写がたくさん出てくる場面があるのだが、そこに至るまでに散々焦らされていたので、ようやく撃ち始めたときにカタルシスを感じられた。

    伏線もいくつか仕掛けられており、それらが回収されていくのも楽しい。スナイパーは実際の射撃の前に入念な準備をするものらしいが、本書のストーリーもそのようだった。繰り返しなるが、劇的な展開に至るまでに丹念に準備されている。

    さて、主人公のボブ・リー・スワガーがヴェトナム戦争に従軍したということで、やや隔世の感がある。ベトナム戦争は1975年までなので、僕が生まれるはるか昔である。なぜベトナム戦争なのかというと、本書がアメリカで出版されたのが1993年だからだ。

    30年以上前に刊行された小説なので、当然いまほど監視カメラもないし、携帯電話もインターネットもほとんど出てこない。そうした背景で成り立っているストーリーではある。

    それを引いても、読んでいて面白い。シリーズが10巻以上あるのも納得である。現在、シリーズの外伝的作品である『ダーティ・ホワイト・ボーイズ』を読んでいる。こちらも読み応えバッチリで、ついつい読み進めてしまう面白さだ。

    最後に、映画の方の『ザ・スナイパー 極大射程』を見たことを書いておく。小説で上巻の半分を費やして描写された展開がものの15分くらいで終わって驚いた。尺の都合上、キャラの設定が大きく異なる部分があった。どちらも目を通した上で、小説版の方が面白いし好きだなと思った。