ようやくNetflix版『三体』を観た

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Photo by John-Mark Smith on Pexels.com

ドラマ「三体」がNetflixで配信されて三ヶ月が経った。この三ヶ月間、「そろそろ観なきゃなぁ」と思い続けていたが、ようやく重い腰を上げて観たので感想を雑に残しておく。

そもそも三体とは何か。知らない人のために補足すると、三体とは「中国の超絶面白SF小説」である。アジア人で初めてヒューゴー賞というSFの凄い賞を獲得した小説というお墨付きで、内容の展開がスリリングでスケールも大きいので非常に面白い。日本だと「エンタメ小説」として売られていたが、これは日本の「SFが売れない」という現実を反映しているのだろう。悲しいが仕方がない。

その実写ドラマがNetflixで配信されたのだ。ちなみに中国本国でもテンセントが実写ドラマを別途配信している。そのため、Netflix版はテンセント版のあとに製作されたものとなっている。テンセント版はこれまで日本だとWOWOWでのみ視聴できたが、何と2024年7月からAmazonプライムビデオでも配信されることになったと友人に教えてもらった。プライム会員なので近日中にこちらも観たい。

しかし、いまはNetflix版の話をしよう。

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Netflix版の一番の感想は「ギュッとしてるな〜」だった。三体の原作小説は三部作だ。一部と二部は時系列の順になっているのだが、三部の開始は二部の最初と同時期である。なんとNetflix版は一部、二部、三部の話を同時に進めようとしていた。それにも関わらずシーズン1はわずか8話しかない。どういう魔法を使ったのかは小説を読んだ上でドラマを見ていただくと分かると思うが、完全にギュッとしてる。

さらに複数の登場人物の役割を一人の人物に負わせるということをいくつもしており、登場人物の数もギュッとしている。これは上手いことやったなあと思う部分もあるが、シーズン2以降の展開で無理が出てくるのではないかと不安が大きい。特に原作ではお互い知り合いではないはずの登場人物たち(の役割を背負っているキャラクター)が、Netflix版では最初から親友であることで問題が起きるのではないかと感じた。知り合い程度なら良いが知り合いや恋愛関係にあった場合、そこでの別の葛藤などが描かれてしまい本筋がブレるのではないかという危惧がある。そこは脚本家が上手くやるのだろうが、ただでさえギュッとしているにも関わらず、そんなことができるのか不安である。

ストーリーに関しては原作が超絶面白小説なので、多少改変しても本筋さえ同じであれば面白くないわけがない。実際、なんやかんやで面白い。しかし、先にテンセント版があるゆえかオリジナル部分や改変部分が目につくため、人によってはガッカリというか改変自体を無駄に感じることもあると思う。

ただ、恐らく話数が少ないのも登場人物の数を少なくしているのも、舞台をイギリスにしてキャラクターの人種や性別を変えているのも、このドラマから三体に入る視聴者になるべく入りやすくさせようと試行錯誤しているのだろうなとは感じる。

しかしながら、個人的に小説版三体の面白さは、SFの持つ世界の謎を解き明かすスリリングさにあると思うため、そこの部分が人間ドラマによって薄められているように感じた。もちろん原作にはない倫理的葛藤や人間ドラマの追加によって訴えかけるものや、面白くなった部分があることは否定しないし、前述のように間口を広げようとする工夫としても悪いことではないと思う。総合的には面白かったが、今後の展開でどこまで原作と同じように進むのかということが気になる。もちろん面白ければ、オリジナル路線に突き進むのも悪くはない。

明確な不満点をあげるとすれば、史強というキャラクターの扱いである。原作では最初はぶっきらぼうだが物語が進むにつれて非常に頼りになるナイスガイで、つい「大史(ダーシー、史兄貴というニュアンス)」と呼んでしまうようか温かみのあるキャラクターなのだが、このドラマではやや頼りがいが減ってしまっていることである。どうしても上司に置かれたトマス・ウェイドの方が存在感が大きいし、息子との関係性に悩む親父という側面が出過ぎているように思った。シーズン2での史強の活躍に期待している。

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